Waterfall in Nahuel Huapi

4. アンデス横断編 (7/24〜7/25)

●湖と雪と秘境のツアー

カテドラル山でのスキーを終えて、翌日からの予定はこれといって決まっていません。決まっているのは、5日後の夜にサンチアゴを出るマイアミ行きの飛行機に乗れば良いということだけです。順当にいけば来た道を夜行バスで戻るところですが、さすがにまた24時間はつらいので、途中のOsornoかPuerto Montあたりで観光をしていくような感じでしょうか。ちょっと奮発して飛行機という手もあります。あるいは、さらに先に進んでブエノスアイレスあたりを目指すというのも不可能ではありません。さーてどうしようかと考えながらバリローチェの街をブラブラしていた私の目に留まったのは、とある旅行代理店の店頭にあったツアーの案内でした。うろ覚えですが、"Lake Crossing Tour to Chile"とでも書かれていたでしょうか。ここからチリに戻るルートは、おとといのバスの道だけかと思っていたら、なんと船とバスとを乗り継いで、アンデスの奥地を越えていく方法があるらしいのです。何と魅力的な。値段は決して安くはありませんが、これを逃して帰ったら、きっと後悔しそうです。クレジットカードも使えそうだし、よし、と思って代理店のドアを開け、さっそくツアーの参加申込みをしてしまいました。

Snowy Lake翌朝、朝食を終えてチェックアウトもすませ、待っているとピックアップのバスがやってきました。いよいよツアーの始まりです。まずはそのままバスでバリローチェの街を出ると、湖沿いに30分ほど走ります。そこで船に乗り換え。天気もいいし、Nahuel Huapi湖を行く船は、芦ノ湖あたりの遊覧船といった趣きです。しばらく進むと、湖岸に流れ込むちょっとした滝(上の写真)があったりして、そんなところではスピードを緩めたりしながら、のどかな船の旅が続くこと約1時間、森に囲まれた静かな桟橋に上陸しました。すぐそばにレストハウスのような所があって、どうやら昼食のようです。このツアーにはガイドが付いているのですが、案内は基本的にはスペイン語。北米あたりから来ている客もけっこう多いような気がするのですが、まあアメリカあたりのインテリは片言のスペイン語ぐらいわかったりすることが多いので、ツアーの案内ぐらいは大丈夫なんでしょうか。そんな中で、私一人がまったく蚊帳の外という感じでボーッとしていると、このガイド(下の方の写真で、バスの横に立っている男性です)がツカツカと私の方へ歩いてきて、同じ内容を英語で簡単に説明してくれる、そんなパターンがツアーの最後まで続くことになるのでした。

Snowy Road 昼食後は再びバスに乗りますが、こんどはたいした距離ではありません。途中、なんだか大きな杉か何かの木のところで、ガイドさんが熱心に説明しています。縄文杉みたいな謂われでもあるんでしょうか(こういうツアーの進行に支障のない情報は、あんまり丁寧に英語でまで説明してくれなかったりする)。そうこうしているうちに、すぐにまた湖畔に到着。これはさっきのNahuel Huapi湖とは別の湖のようですが、ここでまた船に乗り換えます。ずいぶん山の奥に入ってきたせいか、さっきまでの芦ノ湖ふうの雰囲気とは異なり、どちらかというと黒部湖とか奥只見湖といった、秘境ふうの感じになってきました。あたりには雪も結構あります。で、この船に乗っている時間もそれほど長くなく、すぐに次の桟橋に到着。今日3台めのバスに乗り込みます。

ここからバスはズンズンと山奥に入っていきます。まさにこのあたりがアンデスの中央部ですね。雪もかなり深くなってきました。途中、丸太をつんだトラックとすれ違ったりして、雪のせいで車がすれ違うだけの幅がないもんだから、けっこう苦労したりもします(写真)。それでも頑張ってしばらく進むと、国境らしき検問でバスが止まりました。2日前の国境越えを思い出して、「あーまたここでたっぷり足止めかぁ」と覚悟を決めましたが、思いの外あっさりと手続きが終わってしまいます。ツアーだからあんまり怪しい奴もいないってことなんですかね。でもって、このあたりから道も下り坂になり、雪も少なく、少しずつ秘境を脱する感じになってきます。さらに1時間ばかり走り、静かな村落っぽいところに到着。今夜の宿泊地、Peullaです。

Hotel Peulla 今朝の段階では、宿泊に関して「Hotel Peullaという綺麗なホテルがあり、みんなそこに泊まる。ただしあなたは一人だし、宿泊費を安くあげたいということであれば、その隣に安いゲストハウスがあるので、そっちに泊まってもいいよ」と言われ、そういうことになっていました。ところがPeullaに着いてみると、「こっちこっち」と皆と同じところに連れていかれます。どうなったのかと訝しんでいたら、「Hotel Peullaの屋根裏の安い部屋があるので、そっちにするかい?」と言われました。いろいろ交渉するのも面倒だし、それで頼むと即決してしまったのですが、いざ部屋に入ってみると、屋根裏といってもちょっと天井が低いぐらいで、シングルだから若干狭いけれど、とても綺麗な部屋で大満足です。ホテルの裏手には綺麗な滝があるということで、ちょっと散歩してきたりして、そのあとの食事は他の人達と同じレストランで取るということで、(ちょっと値が張りましたが)美味しいチリ料理(といっても普通の西洋料理ですが)を堪能しました。私の数少ないボキャブラリー、"Cerveza, por favor(ビール下さい)"もちゃんと言えたし、ツアーも一日楽しかったし、うーん何だかいい旅行だなぁ〜。

●チリの富士山

Mt. Osorno ツアー2日目。朝食後、Hotel Peullaを出ると、すぐにまた別の湖に到着、船に乗り込みます。あたりはかなり開けていて、最初にNauhel Huapi湖で乗った船に近い雰囲気で、朝の心地よい風に吹かれながらのんびりと進みます。どんよりした雲が印象的だった昨日のバリローチェ側と異なり、今日のチリ側は実に清々しい天気です。山の両側でそういうふうに気候が違うのか、それともたまたま昨日と今日の天気の違いなのか、こればっかりは一介の旅行者でしかない私には判断できないのですが。ともかく、雪を冠った山々の美しい姿を眺めながら、ブラジルから来たという親子と仲良くなっておしゃべりしてたりするうちに(お母さんは英語が達者だったけど、娘は英語はあまりできないらしく無口だった)1時間ちょっとでPetrohueというところに到着。ここで昼食休憩です。小奇麗なホテル兼レストハウスがあって、観光地だなあ、という感じ。実際、ツアーの終点となるPuerto Montから来ればここまでは大した距離ではなく、ちょっとした日帰り旅行の範囲内だと思われます。

とにかく昨日のアンデスの山奥が印象に残っているので、今日の行程はまさに郊外ドライブ旅行といった雰囲気。昼食後はバスで移動ですが、道も広くて綺麗だし、すっかり安心といった感じです。途中、Petrohueの滝というところで寄り道。上の写真がそうですが、岩と岩の間を急流の川が流れていく、なかなか豪快なところです。そしてその向こうには、風光明媚で知られるOsorno山が見えています。両側に裾の長い独立峰、山頂付近に雪を冠ったその姿は、まさにチリの富士山という呼び名がふさわしいでしょう。ってそんなこと言われても地元の人は嬉しくないかもしれませんけど。

Puero Mont 再びバスに乗り込むと、あとは目的地Puerto Montに向かって一直線。途中、Puerto Velasという綺麗そうな街を通りましたが、もう観光は十分ということで、そのまま通過。夕方にはPuerto Montに到着。ガイドの兄ちゃんと堅く握手をかわし、バスを降りました。

バスを降りたすぐその先は海。「あー、はるばるアンデスを越えて大平洋まで戻ってきたんだなあ」と、ちょっとしみじみします。すぐその先にバスターミナルがあり、そこに行ってこれからどうするか考えることにしました。Puerto Montとサンチアゴを結ぶルートは、いってみればチリの大動脈、東海道新幹線みたいなところで、もちろんチリに新幹線は無いのですが、高速バスがこれでもかと言うぐらい走っています。しかもすさまじく安いです。1000km近い距離を走る夜行バスが、2000円とかだったりします。このあたりの見どころといえば、さっきのOsorno山に代表される綺麗な山と湖ですが、それはもう満喫したということで、ここはおとなしく夜行バスでサンチアゴに戻ることに決めました。出発まではしばらく時間があるので、近所で夕食。それからあたりの露店を覗いてみます。なんか自分用に記念になるお土産はないかなあ、と考えていたら、いかにも地元っぽいウールのコートを発見。やぶれかぶれのスペイン語による価格交渉の末、11000ペソ(3000円弱ぐらいかな)で購入。これがとても暖かくて大成功、以来10年間、今に至るまで毎冬ずっと着つづけています。ちょっと荷物は増えちゃいましたけど、まああとはサンチアゴに着いて、そんなに大きく移動することもないでしょう。いいお土産が見つかって良かったなっと。


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